『踊り場にスカートが鳴る』と第三の女百合

僕がうたたね游と初めて出会ったのは、いつだかジョジョリオンを読みたくて買ったウルトラジャンプの読み切り『友達の友達は友達じゃない』であった。これがすごく印象に残っていて、もう一度読みたくて単行本の「ユリトラジャンプ」を買ってしまった。ウルトラジャンプはなぜかたまに百合読み切りを載せるのだが、一風変わった味わいで面白いのである。『友達の友達は友達じゃない』は、まあ、題名通りの話なのだが……

 

高校3年の5月という変なタイミングで転校して来たあらしは無事ぼっち飯を外階段で食べることになるも、ひょんなことから生徒会長のゆきと親しくなる。しかしゆきの友人のまおはそれが気に入らないようで……という三角関係百合。

このような、仲の良かった二人の間にもうひとりの女(つまり百合に挟まる女)が加わるタイプの百合を〈第三の女百合〉と呼びたい。〈三角関係百合〉でいいんじゃねーの?とも思うが三人目の女、というのが重要なのでこう命名する。もうすでに他に呼び方があるのかは知らない。「女女新しい女の構図」というのは見たことがある。

さて、〈第三の女百合〉はよくあると思うのだが、『友達の友達は友達じゃない』が印象的な理由はそのオチにある。

まおのゆきに対する気持ちに気づいたあらし。ゆきを奪うつもりはないと言うことでなんだかんだあって二人の険悪な仲は和むのだが、まおと楽しそうに笑うあらしの横顔を見つめるゆきの感情は複雑なもの(というか今その感情に気づいたというようなハッとした表情。うたたね游の漫画ではこういう表情が印象的に使われる)であった。

〈第三の女百合〉は仲が険悪だった第三の女と第二の女(『友達の友達は友達じゃない』ではあらしとまお。新入りが第三の女、第三の女が最初に親しくなるのが第一の女、その第一の女ともともと仲が良かった女を第二の女、とする。今決めた)もゆりゆりしてなあなあな感じで終わることもできるのだが、『友達の友達は友達じゃない』は「友達の友達は友達じゃない」、つまりまおの友達となったあらしはゆきにとって友達以上であった、という複雑な展開になる。

安定した二体運動の中に新たな要素が投げ込まれることで引き起こされる三体問題、それによって生まれたやりきれない感情、これが『友達の友達は友達じゃない』と〈第三の女百合〉の魅力である。

とはいえ、この終わり方ではこのあとの展開はあんまり楽しい感じにならなそうというのも感想であった。あらし←ゆき←まおという矢印なのだから。

しかしながら、楽しい感じの終わり方として、しろしの読み切り『二等辺三角関係』のように三者がゆるーく矢印を向け合うかんじ、もしくは第一の女が他に矢印を向けて第三の女と第二の女だけでゆりゆりしたかんじの終わり方もあるが、『友達の友達は友達じゃない』のような緊張感に比べれば印象に残らない。

僕が第三の女百合の魅力に気づいたきっかけは『友達の友達は友達じゃない』ともうひとつ、竹岡葉月✕フライの『今日、小柴葵に会えたら。』がある。一巻の最後に3人目の女(第三の女ではない。第二の女にあたる)、杏那が出てきたときには衝撃を受けた。

ほかに『友達の友達は友達じゃない』タイプの〈第三の女百合〉は入間人間の『安達としまむら』の安達しまむら樽美がの関係とか(樽美は安達とあんまり絡まないけど)かしろしの『Roid-ロイド-』とかがある。ていうか『やがて君になる』の七海沙弥香の関係もそうだから意外とありふれてるかもしれん。

 

ようやく本題。『友達の友達は友達じゃない』のオチのあとどうすんだ、と思っていたところに、うたたね游の連載『踊り場にスカートが鳴る』である。

社交ダンス部2年のききは「パートナー」(女役)を踊りたいと思いながらも身長の高い自分に「合う役」である「リーダー」(男役)を続けていたが、ある日いままでペアを組んでいた紫苑にペア解消を告げられる。踊り場で憧れのパートナーのダンスを踊っていたききに、小柄な一年生のみちるは言う。「私のパートナーになってください」……

て直球の〈第三の女百合〉じゃねえか!!!第一話からテンション爆上がりである。しかも紫苑はかなり明確な恋愛感情をききに持っていることが第二巻で判明する。しかしこれだけでは終わらず、紫苑の新たなリーダーのモナや、みちるに告白する一年の女子が出てきて事態はさらに複雑になっていくのであった。

『友達の友達は友達じゃない』の先、ききとみちると紫苑の三体問題はどのような解を見つけるのか、続きが楽しみである。