『NOPE』感想:継承と自立の物語

NOPEとは何についての映画だったのか。見る、見られる、そして見られないの関係の映画。映画についての映画、映画の歴史、映画を撮ることについての映画、というのはごもっとも。SF映画であり、UFO映画であり、怪獣映画でもある。けれど僕がこの映画に感動して、こんなにこの映画のことが好きなのは、この映画は継承と自立の物語だからなのだ。ノープは世界最初の映画?といわれる『動く馬』から始まる。この『動く馬』は上下左右を布のようなものに覆われた不思議な場所で上映されているのだが、後でこれはじつはノップちゃん(UFO、正式名称GジャンをぼくはBLACKHOLEにならってこう呼ぶ)の食道だったのだとわかる。主人公兄妹の妹のほう、エメラルドによれば『動く馬』の騎手である無名の黒人は自分たちのひいひいひい+ひいおじいちゃんだという。一方兄のOJは父を失ったあと受け継いだ牧場を経営しているのだがうまくいっていない……。つまりこの映画で描かれる物語はこうだ。この映画は、OJが一人前のカウボーイになり先祖からの継承を果たすまでの物語なのだ。

最後に霧の中で馬のラッキーに乗ったOJお兄ちゃんがいる幸福感。それは父親の敵討ちを果たし一人のカウボーイとなったOJ、これだけ色々つめこみエンタメ性もあり社会性も高い映画でありながら、だからこそ、映画の=家族の歴史を継承したOJが最後に現れるからこんなにも感動的なエンディングなのだろう。