エクスペンダブルズ ニューブラッド感想:本当の消耗品は誰なのか

2024年最初の映画は『エクスペンダブルズ ニューブラッド』となった。見に行った理由は宇多丸が評論するらしいから。どうも世評があまりよくないようで、宇多丸のダメ出し回は見てから聞いたほうがおもしろいだろうということで見に行った。

エクスペンダブルズは〈消耗品軍団〉である。しかし映画を見ていると、本当の消耗品はいったい誰なのかという気分になってくる。
なにせ、エクスペンダブルズのメンバーは全員一騎当千の戦士なのだ。そのからだに銃弾は当たらず、敵の兵士を一撃で殺していく。一方の敵の兵士には名前もなく、ろくに活躍せず次々と死体になっていくばかり。
『エクスペンダブルズ ニューブラッド』は消耗品vs.消耗品の話なのだ。

いきなりネタバレだが、今作のストーリーは第三次世界大戦を引き起こそうとする黒幕の自作自演である。
エクスペンダブルズはCIAのマーシュという人物の依頼で傭兵ラフマトとその裏にいる謎の武器商人オセロットを追う。エクスペンダブルズはラフマトの乗る貨物船を襲撃するとオセロットの正体はエクスペンダブルズを雇ったマーシュその人だったことが判明する。マーシュ=オセロット核兵器をロシア近海で使用し、その責任をエクスペンダブルズに負わせることで、第三次世界大戦を引き起こそうとしていたのだ。
映画終盤、オセロットは貨物船に核兵器をしかけ、爆破しようとするも、直前で船の指揮をリー・クリスマス(ステイサム)に奪われる。オセロットは部下の兵士に対しステイサム殺害を命令すると、部下は爆発が近く時間がないとして拒否。すると、オセロットはその拒否した兵士を射殺してしまう。オセロットにとってエクスペンダブルズも、ラフマトの兵士も、同じ消耗品だったのだ。
真の敵は、消耗品同士を戦わせていた武器商人であり、兵士の後ろにいる政府の人間だったのである。

エクスペンダブルズも、ラフマトの兵士も、一人の男の下に集った傭兵という点では同じのはずだ。しかしラフマト兵の最期は悲惨だ。エクスペンダブルズによってボディカウントの一つにされるか、核爆発で跡形もなく吹き飛ばされてしまうのだから。生存の見込みはまったくない。

わけあってステイサムはYouTubeで人気になるのだが、その動画を敵兵士が見ているシーンがある(「この男は俺のヒーローなんだ」「会ってみたいなあ」)。まあそのあとすぐステイサムに喉をかき切られて死ぬんだけど、そういう名もなき兵士にも愛のある映画だったと思う。いや、ボクはエクスペンダブルズに殺されていった名もなき兵士たちを愛したいと思う。


感想としては、スケールが小さい、という感は否めない。
エクスペンダブルズの過去作はずいぶん前に見たので内容はよく覚えていないけれど、無駄に豪華だ(俳優や火薬の量)、という印象だった。
しかし今作はとにかくこじんまりしている。
なんといっても、映画の大半は一隻の貨物船の中の話なのだ。
とはいえ貨物船の構造を隈なく使い、船のどこでどう戦っているのかしっかり見せるアクションは楽しかった(ステイサムは機関銃つきバイクで船内を疾走する!「やつは今貨物室、いや食堂、いや……!」)ので、そういうものとして見ればかなり良かった。